四国遍路 ライブ旅行記2025 森谷東平.
再びお四国へ 2024年初夏に遍路旅をしてすっかり四国のファンになった。テレビで四国関連のニュースや番組があると食い入るように見てしまう。2025年1月遍路を再開し、前回と同様毎日の旅行記をネットで発信する「ライブ旅行記」とする予定である。生き生きとした旅を記録できたら、と願う。
ライブ旅行記 21世紀最初の年の2001年、一人でイースター島に1週間滞在したことがある。その時MacBookを持参し毎日旅行記を書いた。ただ、それを現地でインターネットに発信することはできなかったと思う。現地でネット発信した最初の旅行記は、2004年カナダの東の果てニューファンドランドに2週間のドライブ旅行をした時である。また、2007年一ヶ月のインド旅行ではMacBook Airを担いで行き、インターネット接続できる場所を探しながらの旅をした。今回、スマホという軽い機器で場所を選ばずに音声入力で旅行記が発信できる時代になったことに感慨を覚える。
前回の遍路の後に遍路関連で実施した事柄を簡単に書きたい。
高群逸枝の「ライブ旅行記」 前回の遍路中、中村から久百々に歩いたとき(2025.5.8)、真念庵の近くで「娘巡礼記に登場する遍路墓」を見た。娘巡礼記という書物も著者の高群逸枝の名も知らなかったので、帰宅後に調べた。
高群逸枝は、明治、大正、昭和を生きた詩人にして学究、社会運動家である。その著書「娘巡礼記」(図1)は大正7年、22歳の時の処女作であるが、遍路をしながら新聞社に原稿を逐次送付し連載されたもので、本として出版されたのは逸枝の没後であった。つまり、逸枝自身は自分が書いた「娘巡礼記」を書物として読んでいない。一方、「お遍路」(図2)は生前に「生活費を稼ぐために」手元に残っていたメモをもとにして執筆出版されたものである。2冊の本の内容は似ているが、「娘巡礼記」では臨場感や著者の感動が直接伝わってくる点で圧倒的に印象深い。当時の「ライブ旅行記」と言えるであろう。
評論集「高群逸枝1984-1964」この本(図3)は藤原書店から2022年に刊行されたもので、逸枝の執筆、業績、社会活動、私生活などを知ることができる。逸枝が遍路に旅立つ動機の一つは、憲三との恋愛問題であった。遍路の後、二人は結ばれ東京での学究、出版生活を送る。二人の協力関係を称える人たちがいる一方で、夫、憲三のエゴイズムに逸枝が「曲従」する人生だったとの指摘もあり考えさせられた。
高田秀峰著「四国遍路ー迷子のおとなたち」(法蔵館2024年6月刊)(図4)この本は前回の旅から帰った直後に発刊されたものを立ち寄った書店で見つけた。著者は、四国六番札所安養寺のご住職。遍路の歴史、文化、信仰などを全世界的視点でとらえようとしている。四国遍路は「はじまりと終わりのない」円環型巡礼である点で世界的にもユニークであると指摘しているなど興味深い。
HenroHelperの使い方 前回の旅では多くの外国人遍路に出会った。彼らが使っているスマホアプリ「HenroHelper」がとても使いやすい。帰宅後に見知らぬ女性の方からメールをもらった。この方も遍路中に外国人遍路からHenroHelperを教わったが、英語なので使い方がよくわからない、ネットで検索したら私の旅サイトにたどり着いた、とのことである。同様な方に役立つような「使い方」を作って公開しようと思い立った。このアプリはJames Raynald Deveaultさんが2024年に発表したもので、「使い方」の英語説明がYouTubeにあることがわかり、これを基に日本語の使い方のサイトを作った。Jamesさんにもメールを差し上げサイトの公開を快諾していただいた。
出発の2、3日前に西日本に寒波が襲い四国に雪が降るとのニュースがあった。アイゼンも用意した。インフルエンザが流行している。それらの不安もあるが、安全第一で冬の遍路を楽しもう。
その4 愛媛県(後編) [2025.1.13 ~ ] 52番 ~
[2025.1.13 MON]
*** 青梅 ー 松山 ***
東海道山陽新幹線はその開業以来、煩雑に利用した。今回久しぶりにそれに乗って東京から岡山まで車窓の景色が走馬灯そのもののように移り変わっていく。東京のコンクリートジャングル、雪をまとった富士山、刈り取られた田が広がる濃尾平野、雪と雪雲で灰色に包まれた関ヶ原と米原・・・どの景色も過去を思い起こさせるのに、そんな感傷を壊して突き進んでいくのが新幹線だ。
岡山で「しおかぜ11号」に乗り瀬戸大橋を渡り、さぁいいよ四国だ。予讃線の景色は、これから自分が歩く近い未来の道だと思うと、特別な思いがあり眺める。席を立った時、後ろの座席に座っていた高校生ぐらいの女性が私を見て微笑んだ。軽く会釈をした。列車が松山に近づいて、荷物の整理をしようとしたら、その人の隣にいた女性(多分その人の祖母であろう)が「私たちも区切り遍路をしていて、もうすぐ満貫なんです。」と言う。
松山では、路面電車で遍路の出発点の道後温泉へ。そこから道を公園の小山に登り、市内を展望。山を降りて、二番町の宿へ。
[9,053歩 6.73km]. (ネストホテル)
[2025.1.14 TUE]
••• 松山市二番町 ー 松山市北条 •••
5時起床。ホテルのビュッフェ形式の朝食をいただく。メニューは豊富で満足した。7時20分出発。繁華街のアーケード歩いて行く。松山は大都会だ。7時50分松山市駅、8時15分JR松山駅。さらに街を歩いて8時50分伊予鉄道衣山駅の踏切を渡った頃、ようやく街外れの郊外らしくなった。北に見える小山が目指す太山寺だろうか?ファミリーマートに寄った時、思いがけず女性の方からご接待を受けた。10時30分、第52番札所太山寺の仁王門に到着。この門は鎌倉時代の建築である。ここは大きなお寺で、仁王門から本堂まで350メートルもある。本堂、大師堂を参拝後境内散策。山頭火の句碑に「もりもり盛り上がる雲へあゆむ」。夏空の下を旅するときの歌であろう。
お好み焼き屋でランチを摂る。東京では、お好み焼きはあまり馴染みでなかったが美味しくいただいた。13時半、53番札所円明寺に到着。規模の小さいお寺である。左足指のマメと靴擦れが痛い。薬のレディで紙絆創膏とガーゼを買い、手当てする。海沿いの道を北上。すでに20キロメートル以上歩いている。疲れてきた。左手前方に小山の島がある。鹿島だろう。17時半、夕日が沈む前に松山市、北条の宿に着いた。
[42,141歩 31.31km]. (カフェと御宿まほろば)
[2025.1.15 WED] 曇り、小雨のち晴れ、風が冷たい
••• 北条 – 浅海 – 菊間 – 今治市大西 •••
まほろばの朝 朝食時、この宿を経営する上田ご夫妻と話。ダイニングルームには奥様の作品、可愛い動物の焼き物や掛け軸などが展示されている。ご主人は幅広い趣味の持ち主。個性的な趣味と味と会話で客をもてなす四国では珍しい宿だ。ペットのラブラドール犬、サーブ、とも面会。大きくて人懐こく相手の気持ちがわかるようにこちらをじっと見て、遊んでくれと走り回る。
鴻之坂峠から浅海へ 8時半、出発。雨が降ったのだろう、地面が濡れているが天気はもつだろう。広々とした畑の向こうに尖った山が並んでいる。頂上が折れた形の腰折山とピラミッド型の恵良山。こういうのどかな道を歩くのが好きだ。腰折山の左の裾の道を上がっていく。9時過ぎに鎌大師に参拝。腰折山は「エヒメアヤメ」の自生地であるとの案内板がある。しばらく行くと舗装された急な坂道(鴻之坂)が続く。上から降りてきた自動車が停まり、男性が駆け上がってきて、「お接待させてください。以前私も遍路中に多くの方にお世話になりましたから」と現金を差し出すと車に戻って行った。いつものことながら恐縮する。登りが終わった。鴻之坂峠だ。遍路休憩所があり、眼下に浅海の集落と海が見える。海に突き出た岬あたりが松山市と今治市の境あたりだろう。
菊間 これまでの山道から一変して、浅海からは山が海辺まで迫った国道で目にする景色が一変。11時、今治市菊間に入った。国道砥鹿山トンネルの海側にある脇道を通る。現在は国道があるが、昔はこの辺りは難所だったのではないだろうか?12時半ごろ、道沿いに瓦を扱うところが多くなってきた。その一つに男性がいたので聞いてみた。「瓦の創業は明治22年、最盛期には77軒の業者があった。今は12件ほど。この土地の気候、湿り気や風、が良かったのだろう。昔はこの辺りの家の裏で焼いていたが、今は’香川県に出している。」遍照院を参拝。門の脇に飾られた鬼瓦(写真)が立派だ。
お昼時だが、ランチをとるところがない。コンビニもない。13時半、ようやく「珈琲館臍島」を見つけた。ここのピザは、その生地からおかみの手製ということで美味しくいただいた。おかみは安永智恵美さん(写真下)。40年ここで営業。明るく話が上手な方。お遍路の皆さん、ぜひ寄ってください。店の名前の臍島は、店を出て歩いて行くと見えた(写真下)。でべそだな。
すぐ先は太陽石油菊間製油所で蒸留塔が林立している。現在、大規模な工事中である。私も若い頃似たような化学工場で働いたことがあり思わぬところでの光景に感慨を覚えた。若い人たちが沢山働いているのが見える。あの中の一人は昔の自分だ。「安全第一」で頑張れよ!
製油所のすぐ先に遍路道。左の坂道を上がって行くと「青木地蔵堂」。堂のそばの建物は畳敷きで泊まることができそうだ。リュックが置いてあった。山道を降りたあたりが伊予亀岡で平野が広がってきた。ゆったりとした遍路道を歩き、17時にビジネスホテル「つよし」に到着。おかみは津吉久美子さん。話好き、世話好きの明るい方。太陽石油の工事に関連する方々のほか総合格闘技のスポーツマン二人が滞在していた。
[33,340歩 24.77km]. (ビジネスホテルつよし)
[2025.1.16 THU]
••• 今治 ー 仙遊寺 •••
高縄半島を南下 松山から今治までは高縄半島の西海岸に沿って北上してきた。今日は、半島を東に横断して54番、55番に参拝して今治中心部に行き、そこから南下、56番、57番を経て山中の58番仙遊寺まで旅をする。
国道沿いバス停大西の近くに「土岐氏の墓」がある。今治城主だった藤堂高虎に仕えた土岐氏である。このあたりから国道の喧騒を離れ畑の中の遍路道を歩く。
[34,974歩 25.98km]. (仙遊寺宿坊)
[2025.1.17 FRI]
••• 58仙遊寺 – 59国分寺 – 伊予三芳 •••
[31,246歩 23.22km]. (四国屋)
[2025.1.18 SAT]
••• 伊予小松 – 61香園寺 – 62宝寿寺 – 63吉祥寺 – 伊予三芳 – 伊予小松 •••
[28,723歩 21.34km]. (四国屋)
[2025.1.19 SUN]
••• 伊予小松 – 60横峰寺 - 伊予小松 •••
[35,426歩 26.32km]. (B旅館小松)
[2025.1.20 MON]
••• 伊予小松 – 石鎚山成就社 – 石鎚山温泉 •••
[12,833歩 9.53km]. (石鎚山温泉)
[2025.1.21 TUE] 晴れ 暖かい
••• 石鎚山温泉 – 64番前神寺 – 西条 •••
[14,496歩 10.77km]. (西条ステーションH)
[2025.1.22 WED] 晴れ 暖かい
••• 西条 – 土居 •••
[41,857歩 31.1km]. (旅館まつや)
[2025.1.23 THU] 晴れ 暖かい
••• 土居 - 伊予三島. •••
[21,259歩 15.8km] (おおなる)
[2025.1.24 FRI] 晴れ
••• 伊予三島 – 65番三角寺 – 徳島県三好市 •••
[36,732歩. 27.29km]. (民宿岡田)
[2025.1.25 SAT] 晴れ
••• 三好市 – 66番雲辺寺 – 67番大興寺 •••
[33,276歩] (民宿四国路)
[2025.1.26 SUN] 晴れ
••• 四国路 – 68, 69番神恵院, 観音寺 – 70番本山寺 – 本大 •••
[29,279歩 21.75km] (Tablet 本大ビジネスホテル)
[2025.1.27 MON] 曇りのち雨
••• 本大 – 弥谷温泉) •••
[22,920歩 17.64] (弥谷温泉 大師の湯)
[2025.1.28 TUE] あられ後雲 寒い
••• 弥谷温泉 – 71弥谷寺 – 72曼荼羅寺 – 73出釈迦寺 – 74甲山寺 – 75善通寺 •••
[23,837歩 17.71km] (ゲストハウス風のとおる)
[2025.1.29WED] あられ後晴れ、強風寒い
••• 善通寺 - 76金蔵寺 – 77道隆寺 – 78郷照寺 – 宇多津 •••
強風 天気予報では、気温2℃、体感温度マイナス7℃という。モコモコのセーターを着込んで出発。風で菅傘が飛ばされそうになる。空に群れている鳥もコントロールを失っているかのようだ。畑では、紐の端は支柱に結ばれている凧が5個激しく回転している。
76番金蔵寺 高い木の柱で組まれた鐘楼の鐘を撞き参拝する。納経所で、「10年に一度という寒波が来るらしい。これから山道もあるから、充分気をつけなさい。」と忠告された。突然雪が舞ったが、すぐやんだ。風は強いままだ。これから遍路を続けられるのか心配になる。
77番道隆寺
78番郷照寺 お寺の階段を上ると、多度津の街がよく見え、遠方には瀬戸大橋が見えている。本堂では笛の音の音楽を鳴らしているのが珍しい。さらに階段を上ると、大師堂では厄除けの祈祷を太鼓を使って実施しているので、しばしそれに聴き入る。78番の数下の道は、昔門前町として栄えたのであろう。格子戸の家並みが続いている。歩いて行くと、橋があり、橋に沿って高い建築物があるのが珍しい。水門を操作するところのようだ。
今夜の宿は、遍路道のすぐ近くにあり、隣接してショッピングモールがあるという良い立地だ。
[29,028歩 21.57km] (ホテルAZ宇多津)
[2025.1.30 THU] 晴れ、風強く寒い
••• 宇多津 – 79天皇寺 – 80国分寺 – 81白峯寺 – カッパ道場•••
天気予報では、今日は晴れだが風が強く体感温度はマイナス7℃ ~プラス2℃。防寒対策を整えて出発。宇多津の街の中をまっすぐ東に進む。
天皇寺 ここは白峯神社と79番天皇寺が同じ敷地にある。
[40,962歩 30.43] (カッパ道場)
[2025.1.31FRI]
••• カッパ道場 – 82根来寺 – 83一宮寺 •••
[29,677歩 22.05] (温泉きらら)
[2025.2.01]
••• 一宮 – 高松 – 青梅 •••
[7,285歩 5.41] (自宅)
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